論文対策講座
論文対策講座-民事訴訟法_問題1-1

Xは、歩いて道路を横断中、Yが運転する自転車と接触して負傷したため、Yに対し、 200万円の損害賠償を求める訴えを提起した。この訴訟において、Xは、事故の原因は 急いでいたために赤信号を無視したYにあると主張した。裁判所は、事故はYの過失によ って発生したものであるが、事故の原因はYが赤信号を無視したことではなく、Yが整備 不良のためにブレーキがきかないまま自転車を運転し、道路に飛び出したことにあると認 めた。 裁判所は、どのような判決をすべきか。 (平成21年旧司法試験第1問目を大幅に改題)

論文対策講座-民事訴訟法_問題1-1_参考答案

1裁判所は、Yの過失を認め、200万円の請求認容判決を下す ことができるか。 かかる判決を下すためには、Yによる自転車の整備不良の事実 を認定しなければならないが、この事実はXYとも主張していな いと考えられる。そこで、当事者の主張しない事実を判決の基礎 としてはならないとする弁論主義(第一テーゼ)に反しないかが 問題となる。 2(1)アまず、弁論主義の適用される「事実」の範囲が問題となる。 イ弁論主義の根拠は私的自治にあり、機能は不意打ち防止にあ る。そして、訴訟において、権利義務の存否の判断のための終 局的な対象は主要事実であり、この主要事実の存否の判断に対 する関係では、間接事実や補助事実は証拠と同じ機能を果たす。 そこで、主要事実について弁論主義を及ぼせば、不意打ちは 防止できる。他方で、間接事実や補助事実についてまで弁論主 義を及ぼせば、自由心証主義に反する。 ウしたがって、弁論主義の適用範囲は主要事実に限られると解 する。 (2)アでは、過失の認定における主要事実を、どう捉えるべきか。 イ「過失」とは規範的な要件であり、その評価は裁判所の専権 事項であると考えられる。そこで、弁論主義の根拠たる私的自 治が妥当しない。 また、当事者は、「過失」そのものではなく、過失を基礎づ ける具体的な事実に対して攻撃防御を尽くすと考えられる。そ こで、かかる事実を主要事実としなければ、当事者にとって不 意打ちとなり、弁論主義の機能が果たされない。 ウしたがって、過失の認定における主要事実は、過失そのもの ではなく、過失を基礎づける具体的事実であると解する。 3以上により本件を検討すると、本件における主要事実は、過失 そのものではなく、これを基礎づける具体的事実である。すなわ ち、赤信号を無視したこと、整備不良のためにブレーキがきかな いこと、といった事実が主要事実となる。 そして、整備不良のためにブレーキがきかないという事実につ いては、XYの主張がないと考えられる。かかる事実につき裁判 所が判決の基礎とすれば、Yにとって不意打ちとなる。 よって、弁論主義により、裁判所はこれらの事実を判決の基礎 として採用できない。 4以上より、裁判所は、Yの過失を認めることはできず、請求棄 却判決を下すこととなる。 以上


論文対策講座-民事訴訟法_問題1-2

Xは、自転車に乗って道路を横断中、Yが運転する乗用車と接触して転倒し負傷したた め、Yに対し、1000万円の損害賠償を求める訴えを提起した。この訴訟において、Y は、請求棄却を求め、事故の原因は急いでいたために赤信号を無視したXにあると主張し た。裁判所は、事故はYの過失によって発生したものであり、Xの被った全損害の損害額 は1000万円であるが、整備不良のためにブレーキがきかないまま自転車を運転し赤信 号の道路に飛び出したXにも5割の過失があると認めた。 裁判所は、どのような判決をすべきか。 (平成21年旧司法試験第1問目を改題)

論文対策講座-民事訴訟法_問題1-2_参考答案

1裁判所は、Xの過失を認め、過失相殺により500万円の請求 認容判決を下すことができるか。 2弁論主義との関係 (1)アまず、本件では、Yは訴訟で過失相殺の主張をしていない。 そこで、当事者が主張していないにも関わらず、過失相殺の 規定を適用することは、弁論主義に反しないかが問題となる。 イ過失相殺の趣旨は、損害の公平な分担という公益的な要請 に基づくものである。そこで、私的自治は妥当しない。 そこで、過失相殺は事実抗弁と考えるべきであり、過失相 殺の主張自体はなくても、裁判所が過失相殺の規定を適用す ることは弁論主義に反しないと考える。 (2)ア次に、かかる判決を下すためには、Xが自転車の整備不良 により、赤信号でブレーキが利かず道路に飛び出した事実を認 定しなければならないが、この事実はXYとも主張していない と考えられる。そこで、かかる事実を認定することが弁論主義 (第一テーゼ)に反しないかが問題となる。 イまず、弁論主義の適用される「事実」の範囲が問題となる。 弁論主義の根拠は私的自治にあり、機能は不意打ち防止に ある。そして、訴訟において、権利義務の存否の判断のため の終局的な対象は主要事実であり、この主要事実の存否の判 断に対する関係では、間接事実や補助事実は証拠と同じ機能 を果たす。 そこで、主要事実について弁論主義を及ぼせば、不意打ち は防止できる。他方で、間接事実や補助事実についてまで弁 論主義を及ぼせば、自由心証主義に反する。 したがって、弁論主義の適用範囲は主要事実に限られると 解する。 ウでは、過失相殺の過失認定における主要事実を、どう捉える べきか。 「過失」とは規範的な要件であり、その評価は裁判所の専権 事項であると考えられる。そこで、弁論主義の根拠たる私的自 治が妥当しない。 また、当事者は、「過失」そのものではなく、過失を基礎づ ける具体的な事実に対して攻撃防御を尽くすと考えられる。そ こで、かかる事実を主要事実としなければ、当事者にとって不 意打ちとなり、弁論主義の機能が果たされない。 したがって、過失の認定における主要事実は、過失そのもの ではなく、過失を基礎づける具体的事実であると解する。 エ以上により本件を検討する。 本件における主要事実は、具体的には何というべきかが問題 となるが、不意打ちが防止できるかという観点から検討すべき と考える。 本件では、加害者Yは、「Xが赤信号を無視して交差点に進 入した」と主張しており、他方で裁判所は「Xの自転車が整備 不良のためブレーキがきかず、赤信号の道路に飛び出した」と 認定している。これらの事実は、「赤信号であるのに交差点に 進入した」という、Xの過失について争いとなる主要な部分で は共通している。 そして、このような主要部分について攻撃防御が尽くされて いれば、かかる事実を認定しても、Xにとって不意打ちとなら ない。 そこで、本件では「赤信号であるのに交差点に進入した」こ とが主要事実であるというべきであり、この主張はなされてい る。 オよって、自転車の整備不良による赤信号での飛び出しの事実 を認定しても、弁論主義には反しない。 (3)以上より、裁判所は、Xの過失を認め、過失相殺の規定を適用 できると考える。 3一部認容判決の可否 (1)Xは、1000万円の支払いを求めているところ、裁判所が 500万円について一部認容判決を下すことは、処分権主義 (246条)に反しないか。 (2)処分権主義の根拠は、私的自治の尊重にあり、その機能は不 意打ち防止にある。 そして、原告からすれば、請求の一部しか認められない場合、 棄却判決が下されるよりは一部の支払いを求めると考えられる。 他方、被告からしても、全部認容判決がありうる以上、一部 認容判決を下されても不意打ちとならない。 すなわち、私的自治にも反せず、不意打ちともならない。 (3)よって、一部認容判決は処分権主義に反しない。 4以上より、裁判所は、500万円の一部認容判決を下すべきで ある。 以上


論文対策講座-民事訴訟法_問題2

Xは,Yに対し,200万円の貸金債権(甲債権)を有するとして,貸金返還請求訴訟 を提起したところ,Yは,Xに対する300万円の売掛金債権(乙債権)を自働債権とす る訴訟上の相殺を主張した。 この事例に関する次の1から3までの各場合について,裁判所がどのような判決をすべ きかを述べ,その判決が確定したときの既判力について論ぜよ。 1裁判所は,甲債権及び乙債権のいずれもが存在し,かつ,相殺適状にあることについ て心証を得た。 2Xは「訴え提起前に乙債権を全額弁済した。」と主張した。裁判所は,甲債権が存在 すること及び乙債権が存在したがその全額について弁済の事実があったことについて心 証を得た。 3Xは「甲債権とは別に,Yに対し,300万円の立替金償還債権(丙債権)を有し ており,訴え提起前にこれを自働債権として乙債権と対当額で相殺した。」と主張し た。裁判所は,甲債権が存在すること並びに乙債権及び丙債権のいずれもが存在し,か つ,相殺の意思表示の当時,相殺適状にあったことについて心証を得た。 (平成16年旧司法試験第2問)

論文対策講座-民事訴訟法_問題2_参考答案

第1設問1について 1下すべき判決 本問では,甲乙両債権が相殺適状にあり,相殺の主張がなされて いる。そこで,相殺が認められる。 したがって,裁判所は請求棄却の判決を下すべきである。 2既判力 (1)既判力は,判決主文に包含するものに及ぶのが原則である(1 14条1項)。 そこで,本問で請求棄却判決が下されれば,まず甲債権の不存 在につき既判力が及ぶ。 (2)アまた,既判力は,相殺のために主張した請求に対する判断に つき,相殺をもって対抗した額については及ぶ(114条2項)。 もっとも,ここで既判力が及ぶ範囲についてどのように考える べきかが問題となる。 イ既判力の機能は,不当な蒸し返しの防止にあるため,これに必 要な範囲で既判力を及ぼすべきと考えられる。他方で,既判力の 範囲を過度に拡張すれば,後訴における訴訟追行が不自由なもの となるおそれがある。そこで,既判力が発生する範囲は,蒸し返 し防止に必要な限度で最小限にとどめるべきである。 ウここで,相殺に供した債権(自働債権)に及ぶ既判力の範囲に ついて,自働債権が存在し,相殺により消滅したことについてま で既判力が及ぶという考え方もありうる。この考え方は,後日相 殺に供した債権についての争いが蒸し返されることを防ぐ趣旨で ある。しかし,甲債権の不存在につき判決主文で,乙債権の不存 在につき114条2項で既判力を及ぼせば,紛争の蒸し返しを防 ぐことはできる。 エしたがって,200万円の範囲で,乙債権が存在しないことに ついてのみ,既判力が及ぶと考える。 第2設問2について 1下すべき判決 本問では,裁判所は乙債権が相殺に供される前に,乙債権への弁 済の事実があった心証を得ている。 そこで,乙債権による相殺は認められず,甲債権が有効に存在す ることとなる。 したがって,裁判所は請求認容の判決を下すべきである。 2既判力 (1)まず,114条1項により,甲債権に基づく200万円の支払 請求権の存在について既判力が及ぶ。 (2)次に,本問では,Yが,乙債権による訴訟上の相殺を主張した が,裁判所は弁済により乙債権が不存在であったことを理由とし て,Xの請求を認容した。 そうすると,Yは,乙債権による相殺の抗弁を主張し,その主 張が排斥されたのであるから,114条2項により,乙債権が不 存在であったという理由中の判断につき既判力が及ぶ。 第3設問3について 1下すべき判決 本問では,Yが主張する乙債権による相殺に対し,Xがさらに, 訴え提起前に丙債権と乙債権を相殺したことを主張した。そして, 裁判所は甲乙丙いずれの債権も存在し,乙丙債権は相殺されたとい う心証を得ている。 そうすると,Yが訴訟上で甲乙債権の相殺を主張する以前に,X が丙債権による相殺を主張し,それが認められたこととなる。 そこで,乙債権による相殺は認められず,甲債権が有効に存在す ることとなる。 したがって,裁判所は請求認容の判決を下すべきである。 2既判力 (1)まず,甲債権に基づく200万円の支払請求権の存在について 判決主文により既判力が及ぶ(114条1項)。 (2)ア次に,乙債権については,訴訟上の相殺が主張されたが, 結局不存在であったことになるから,114条2項により理由中 の判断につき既判力が及ぶ。 イでは,丙債権についても,同条によりその不存在につき既判 力が及ぶか。 この点,本件訴訟では,乙債権と相殺されていることを理由 として,乙債権による甲債権の相殺が認められないこととなっ ている。それにもかかわらず,後日丙債権の存在を争えること になれば,不当な蒸し返しとなるとも思える。 ウしかし,114条2項は,訴訟上相殺が主張された場合に, 既判力を及ぼすものであり,訴訟外の相殺の主張についてまで 既判力が及ぶとするものではない。 また,前述のように,既判力の生じる範囲は制限的に解する べきであるし,114条2項は理由中の判断について例外的に 既判力を及ぼすという規定であることからも,訴訟外の相殺の 主張についてまで既判力を及ぼすべきではない。 さらに,本件丙債権による訴訟外で相殺の主張は,訴訟外の 事由によって乙債権が存在しないと主張しているにすぎず,結 局設問2の乙債権について弁済済という主張と同じ性質のもの といえる。 エしたがって,丙債権の不存在について既判力は及ばない。 以上


論文対策講座-民事訴訟法_問題3

Xは,Yに対し,ある名画を代金100万円で売却して引き渡したが,Yは,約束の期 限が過ぎても代金を支払わない。この事例について,以下の問いに答えよ。なお,各問い は,独立した問いである。 1.Xは,Yを被告として,売買代金100万円の支払を求める訴えを提起し,第一審で 請求の全部を認容する判決を得たが,代金支払期限後の遅延損害金の請求を追加するた め,この判決に対して控訴を提起した。この控訴は適法か。 2.Yが,Xから買い受けた絵画は贋作であり,売買契約は錯誤によって無効であると主 張して,代金の支払を拒否したため,Xは,Yを被告として,売買代金100万円の支 払請求を主位的請求,絵画の返還請求を予備的請求とする訴えを提起した。 (1)第一審でXの主位的請求の全部を認容する判決がされ,この判決に対してYが控訴 を提起したところ,控訴裁判所は,XY間の売買契約は無効で,XのYに対する売買 代金債権は認められないとの結論に達した。この場合,控訴裁判所は,どのような判 決をすべきか。 (2)第一審で主位的請求を全部棄却し,予備的請求を全部認容する判決がされ,この判 決に対してYのみが控訴を提起したところ,控訴裁判所は,XY間の売買契約は有効 で,XのYに対する100万円の売買代金債権が認められるとの結論に達した。この 場合,控訴裁判所は,どのような判決をすべきか。 (平成22年旧司法試験第2問)

論文対策講座-民事訴訟法_問題3_参考答案

第1 設問1 1 控訴が適法といえるためには,控訴の利益が必要である。その 判断は,第一審における申立てと判決主文とを比較し,前者が後 者を上回る場合に控訴の利益が認められると考える(形式的不服 説)。 2 本問では,Xは第一審で全部認容判決を得ており,申立てと判 決主文が同じとなっている。 また,遅延損害金の請求は,主たる請求とは別個の訴訟物とな るから,別訴提起が可能である。したがって,控訴により遅延損 害金の請求を追加しなくとも,原告にとって不利益とならない。 したがって,控訴の利益は認められない。 3 以上より,Xの控訴は不適法である。 第2 設問2 1 小問(1)について (1) 控訴裁判所の結論からすると,XY間の売買契約が無効である から,主位的請求を棄却し,予備的請求を認容して,YはXに本 件絵画を引き渡せという判決を下すことになりそうである。 しかし,本問では、Yのみが主位的請求の認容判決を不服とし て控訴し、Xは控訴も付帯控訴もしていないから、�,修發修睛� 備的請求は控訴審に移審していないのではないか、��移審してい るとしても、審判対象とならないのではないか、が問題となる。 (2) 移審の範囲 控訴提起の効果は,控訴人の不服の範囲にとどまらず,原判決全 体に生じる(控訴不可分の原則)。したがって, 予備的請求につい ても移審している。 (3) 審判対象 ア 第一審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度においての み、これをすることができる(304条)。 イ 本件では,控訴人Yは主位的請求の認容判決について不服を申 し立てているのみであり,原告は控訴も付帯控訴もしていない。 そこで,予備的請求を認容する判決を下すことは,同条に反し許 されないのではないか。 同条の趣旨は,処分権主義(246条)の上訴審におけるあら われと考えられる。そこで,同条に反するか否かは,判決の取消 や変更が当事者の合理的意思に合致するか,当事者にとって不意 打ちとならないかにより判断すべきである。 ウ 本問では,売買契約の成立が認められれば主位的請求が認容さ れ,売買契約の成立が否定されれば予備的請求が認容されるはず である。すなわち,原告の請求のうち,少なくとも一方は認めら れるはずである。そこで,原告としては,控訴審で主位的請求が 棄却される場合,予備的請求を審理判断されることを期待してい るといえる。 また,原告は,主位的請求につき全部認容判決を得ている以上, 控訴の利益がなく,予備的請求の認容を求めて控訴する利益に欠 けるため,そもそも控訴も付帯控訴もできない。それにもかかわ らず,控訴審で予備的請求について審理判断されなければ,原告 が控訴できない状況下で,原告の主張が全て棄却されるおそれが あり,原告にとって不意打ちとなる。 エ 他方で,被告は,主位的請求については自己の主張が通ったこ ととなる上に,そもそも予備的請求は,主位的請求が認められな い場合に限り審理判断されるものであることは承知しているはず であるから,控訴により予備的請求に対しても判断が下されるこ とを覚悟できる。 したがって,予備的請求につき審理判断されても,被告の合理 的意思に反するとはいえない。 オ そうすると,予備的請求も控訴審での審判対象となるというべ きである。 (4) 審級の利益との関係 ア もっとも,予備的請求については,第一審で審理判断されてい ない。そこで,審級の利益を守る見地から,控訴審で予備的請求 を認容すべきでなく,原審に差し戻すべきではないか。 イ しかし,予備的請求は,主位的請求が認められない場合に審理 判断されるものである。すなわち,主位的請求と両立しない関係 にある。そうすると,第一審でも予備的請求にかかる事実につい て,ある程度審理判断されているのが通常である。 本問でも,売買契約の成立が認められれば主位的請求が認容さ れ,売買契約の成立が否定されれば予備的請求が認容される関係 にある。そこで,前提たる売買契約の成立については第一審で審 理判断されている。 ウそうすると,審級の利益を守る必要性が高いとはいえない。 エ したがって,原審に差し戻す必要はなく,控訴裁判所が自ら 予備的請求の当否につき審理判断できるというべきである。 (5) 以上より,控訴裁判所は,予備的請求の認容判決を下すべきで ある。 2 小問(2)について (1) 控訴裁判所の結論からすると,XY間の売買契約が有効である から,予備的請求を棄却し,主位的請求を認容してYはXに10 0万円を支払えという判決を下すことになりそうである。 本問では,Yが予備的請求の認容を不服として控訴しているか ら,予備的請求を棄却することは問題ない。しかし,主位的請求 を認容することは許されるか。 (2) まず,移審の範囲については,小問(1)と同様,主位的請求につ いても移審していると考えられる。 (3) では,主位的請求も審判対象となるか。 小問(1)とは異なり,原告Xは,主位的請求の棄却に不満があれば, 控訴や付帯控訴ができる。また,原告Xは,被告Yが予備的請求の 認容を不服として控訴しているのだから,予備的請求について棄却 判決が下されうることを覚悟できる。それにもかかわらずXは,控 訴も付帯控訴もしていない。 他方,被告Yは,主位的請求が棄却されたことについて不満がな い。すなわち,Yの控訴はあくまで予備的請求の認容判決のみを不 服とするものであり,主位的請求棄却の判断が覆ることはYの合理 的意思に反する。 そうすると,原告が控訴や付帯控訴をしていない本問では,主位 的請求については控訴審の審判対象とならないというべきである。 したがって,控訴裁判所が主位的請求を認容することは,304 条に反し,許されないと考える。 (4)ア 以上より,控訴裁判所は,予備的請求の棄却判決を下すべき である。 イ このように考えると,原審で主位的請求が棄却され,控訴審で 予備的請求が棄却されることになる。これは,本件で売買契約の 成立が認められれば主位的請求が認容されるはずであり,他方で 契約の成立が否定されれば予備的請求が認容されるはずであると いう択一的関係にあることからすれば不合理であり,原告にとっ て著しく酷となる。 そこで,裁判所が売買契約成立の心証を形成し,予備的請求棄 却の判断をしつつあるとき,裁判所は原告に対し,付帯控訴をし ないのか釈明することが考えられる。 仮にこの釈明の結果,原告が付帯控訴をすれば,控訴裁判所は 心証通り,予備的請求を棄却し,主位的請求を認容する判決を下 すべきである。 以上